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福岡高等裁判所那覇支部 昭和61年(行ス)1号 決定 1986年9月01日

那覇市字識名七三一番地

抗告人

宮城伸昌

右訴訟代理人弁護士

伊志嶺善三

仲山忠克

深沢栄一郎

阿波根昌秀

同市旭町九番地

相手方

那覇税務署長

上原一夫

右指定代理人

布村重成

林田

呉屋栄夫

町田宗伴

玉城清光

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告人の抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二  当裁判所もまた本件文書提出命令の申立ては理由がなく、これを却下すべきものと判断するのであり、その理由は原決定の説示するところ(ただし、原決定書三枚目裏一三行目から同四枚目表五行目までを除く。)と同一であるから、これをここに引用する。

三  抗告人の抗告の理由一は独自の見解であつてこれを採用することはできず、また、以上によれば、抗告人のその余の抗告の理由についてはあえて判断を加えるまでもない。

四  よつて、原決定は相当であり、本件即時抗告は理由がないから民訴法四一四条、三八四条に従いこれを棄却することとし、抗告費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 佐藤安弘 裁判官 池田耕平 裁判官 山崎恒)

右は正本である。

昭和六一年九月一日

福岡高等裁判所那覇支部民事部

裁判所書記官 渡嘉敷康雄

別紙

抗告の趣旨

一 原決定を取消す。

二 相手方は、相手方第二準備書面でいう類似同業者七名全員の、(一)昭和五二年度ないし同五四年度分の所得税の確定申告書、(二)右各年度分の損益計算書(所得税青色申告決定書)を提出すること

との裁判を求める。

抗告の理由

一 原決定は、一つには、本件申立にかかる文書の内容は、相手方が職務上知りえた納税義務者の秘密に属する事項であるから守秘義務の範囲に属するものとし、この守秘義務を理由に抗告人の申立を却下している。しかし本件申立にかかる文書の内容は、右の守秘義務に属するものではなく、仮にそうでないとしても、守秘義務を理由に本件文書の提出を拒否することはできないものである。

二 さらに、原決定は、本件推計課税の合理性は相手方において証明すべき事柄であり、あえて本件文書の提出を求めるまでもないとの理由を述べている。

確かに本件推計課税の合理性は相手方において証明すべき事柄ではあるが、本件申立にかかる文書は、推計課税の合理性についての抗告人の反証にとつても不可欠のものであり、公平や当事者対等の立場から満ても原決定の理由は到底納得できるものではない。

三 また原決定は、「原告は……自らの所得実額を明らかにすることにより容易に推計課税の合理性を覆すことができる……」から、本件申立の必要性はないとも言つている。しかし、抗告人がその所得実績を明らかにするかどうかは、抗告人の反証方法の一つにすぎないものであり、そのような反証方法を取るかどうかは抗告人の選択にまかされている。原決定の理由によれば、この種事件においては、抗告人は必ずその所得実績を明らかにすることを法律上の根拠もなく強制されることにならざるを得ないことになる。

四 いずれにしても、原決定は不服であるので前記抗告の趣旨記載の裁決を求める。

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